◇ ◇ ◇
「……ゆ、め…」
目を覚ましたティファニーはテーブルから身体を離した。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
つくり途中の刺繍が、目の前に転がっている。
瞬きをすると、涙がちぎれ滑り落ちた。
なんだかとても懐かしくて優しい夢を見ていた気がする、内容は思い出せないけれど。
涙は出たが、心は安らいでいた。
濡れた顔を拭いて、ティファニーは時計を見た。
二つの針は昼下がりであると告げている。
それを確認してから、自分が目隠しをほどいていることに気づいた。
のろのろ辺りを見回して、床に落ちていた目隠しを拾う。
父を失ったあの日以来、ずっと纏い続けていた、薄桃色の細布。
『無色の瞳』を見られたら、自分は殺されてしまう、虐げられてしまう。
かけがえのない大切なものを失ってしまう、だから絶対に外してはいけない。
母の言いつけは、今も耳の奥に明瞭に残っている。
それを破って、この瞳を仲間に打ち明ける日が来るとは思わなかった。
秘密を告白するということは、それまで積み上げてきた日々をすべて壊してしまう意味だと考えていたから。
でも、それはティファニーの思い込みだった。
ニコたちは、こんなにも恐ろしいものを持っている自分を受け入れてくれた。
他の街民たちには秘密にすると約束してくれた。
なにより、以前と同じ変わらない関係をつないでくれると言ってくれた。
それがとても嬉しくて、ずっと張りつめていた心が安らいだ。


