「お前、まさか本気にしていたの?僕の話を」
「へっ?」
アウィンは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。
そして、その顔がみるちるうちに真っ赤に染まっていった。
叫びかけたアウィンの口を、セイクリッドは指を押し付けて蓋する。
「敵を欺くにはまず味方、だよ」
「ひどいです、王子。
わたくしが街を駆け回る必要はなかったじゃありませんか。
バカなことやってたんですね、まったく。
……それで、誰なんですか?」
「教えるわけがないだろう。
それについてはこれから話すつもりだ。
気になるなら、その話をよく聞いておくんだ」
「はっ」
第一談話室が見えてくる。
まだ数メートル離れている場所で再び立ち止まり、セイクリッドはアウィンに念を押すように言った。
「お前はなるべく、部屋の隅に目立たないようにいなさい。
僕だけで彼らと話を進める。
……くれぐれも、うっかり口を開いて滑らせたりしないでくれよ」
「かしこまりました」
セイクリッドの頭に、白と黒のチェス盤が浮かんだ。
自分側の白い駒が、黒い駒をどんどん追い詰めていく。
ポーンもナイトも、ビショップもルークも消えた。
残るはクイーン。
これを取れば、キングは簡単に手中に収まる。
(まずはこの場を制して、クイーンを確実に狩り取る)
うっすらとほほ笑んで、セイクリッドは巧みな飾り細工が施されたドアを押し開けた。


