「王子!」
絨毯に吸収されきれなかった足音が近づいて、聞き慣れた声が届く。
セイクリッドは足を止めるとすぐに表情を和らげ、駆け寄ってくる側近を振り返った。
「アウィン、そんなに慌ててどうしたんだ」
「どうしたのじゃありませんよ、あちこちお探ししましたよ。
一体今までどこにいらっしゃったんです?」
「最上階、クロアの部屋だ。
恋人のもとへ行くのは男の役目、これは僕が小さいときからお前に言われてきた教訓だよ。
お互いに忙しくてなかなか会えないからね、だから行ってきた」
「それはまあ、確かに何度も申しましたけれども……。
クロア様のところだったんですね。
てっきり、またクラウンの森に住む……えーとお名前は確か」
「ティファニー」
「ああ、そうそう、その娘の元へ行ってしまわれたかと焦りましたよ」
セイクリッドは小さなため息を落とした。
一瞬、天空と同じ色の瞳に鋭い閃光が走ったが、刹那に戻った。
自分より年嵩の側近に背中を向け、再び歩き出す。
アウィンは3歩程遅れてついていった。
「いくらなんでも、こんな時間に訪ねようとは思わないよ。
ティファニーはまだ大人じゃない、そういうのは大人になってからだ」


