極彩色のクオーレ


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ルース中心部に建つ中央時計大塔。


街長一家の城であり、技術の象徴でもあるため、この塔は王国最大の高さを誇る。


近隣国の建物と比較しても、その高さは群を抜いていた。

セイクリッドはせそのやや上部に位置する廊下を進んでいた。


内装も素人目でも豪奢だと分かるものばかりであり、慣れない者は踏み入ることすら憚りそうである。


しかし王家で育ったセイクリッドは臆することもなく、深紅の緞通の上を颯爽と歩く。


採光性を重視した大きな窓に内装と彼の姿が映り、その向こう側にはルースの夜景が広がっている。


先刻まで、もっときれいな景色を一望できる最上階でクロアと共にいた。


楽しいひとときを過ごしていたはずなのに、セイクリッドの顔にその余韻は欠片も残っていなかった。


「白銀の貴公子」と噂される優しげな雰囲気はどこにも見当たらず、代わりに獲物を虎視眈々と狙う猛禽のような鋭さがあった。


まるで別人である。


憧れと尊敬の眼差しを注ぐ街民たちが今の彼を見たら、獲物の小動物のようにすくみあがって逃げてしまうかもしれない。


セイクリッドがこんなにも怖くなっているのは、今から向かう場所、そこで話すことを考えているせいだった。