「怖いからこそ、人はそれを自分の周りから抹消しようとするのよ、ニコ。
傷つけられることだけが害じゃない。
不快な感情……特に恐怖を与えるものはそれだけでも有害なの。
この『無色の瞳』のことを知られたら私は……街の人たちにとって害な存在でしかなくなる。
私とよく一緒に居てくれるみんなも、きっとそう思われちゃう……無実なのに。
だからもう、私と関わっちゃダメ。
私から離れて、赤の他人のようにならないと、みんなが」
「ああ、もう、うるさい!」
セドナがいらだたしげに両手で髪をかきむしって遮った。
かなりの声量だった。
その余韻に元から静かだった部屋がますます静寂の色に染まる。
声をぶつけられたティファニーは肩をはねさせ、びっくりした顔でセドナに振り向く。
思わず視線を横に流しつつもセドナは怒った声で続けた。
「黙って聞いてりゃ何だよ、もし見られたら、もし知られたらって。
まだセイクリッドに瞳を見られたとも、街中の奴らに知られたとも決まってないじゃねえか。
それをあれこれ余計なほど心配して、それでその結論が、やっぱり俺たちはティファニーから離れるべき?
ふざけんじゃねえよ、勝手に決めるな。
そんな自己犠牲、謙虚でもなんでもねえ、卑屈な人間のやることだ」
ティファニーに声や言葉を荒げるセドナを見るのも、全員が初めてである。
ラリマーたちだけではなくニコまでが、傍観に徹底して2人のやりとりを見守っていた。


