「逃げようにも逃げられなかったわ、怖くて足が動かなくて。
でも、私を探しに来てくれた父さんが助けてくれたの。
父さんはその人と揉み合って殴り合って……その人は岩に頭を強く打って、それきり動かなくなった。
父さんも突き飛ばす前にその人に殴られちゃって……頭から血をいっぱい流して、死んだわ。
顔の半分を真っ赤に染めながら『大丈夫』って私に笑いかけてくれた父さんの姿……今でも忘れられないわ」
ティファニーの告白に、セドナはいつの間にか息をするのも忘れていた。
目の前で父親が殺されてしまう。
同じく幼い頃に事故で両親と死別したセドナだが、直接見てはいない。
周りの大人たちの配慮によってだ。
だから、たった独りでその事実を目撃した彼女の心を理解できるはずもなかった。
「……あとから母さんが探しに来てくれた。
父さんとその人を埋葬してから、母さんは私の瞳について教えてくれたわ。
私はその日から母さんと同じように目隠しをして生活することになった。
人の前で目を開く必要のないように、他の感覚で周囲を見る練習もたくさんした。
だからずっと住んでいるこの家の中は、杖も何にも持たないで行動できるの。
見ないで刺繍をする方法も教えてもらった……母さんが、病気で死んじゃうまで」
「……それで、目が不自由な振りをしていたのか?」
躊躇いながらもセドナが問うと、ティファニーは微かに笑い返した。
涙を拭うように目隠しの上から目のふちを指でなぞる。


