極彩色のクオーレ






ケセラがレムリアンの陰から顔を半分だけ出す。


言いかけてしばらく黙ってから、意を決したようにティファニーは答えた。



「『彩霞ノ民(さいかのたみ)』って聞いたことあるかな?


ラリマーはどう?」


「聞いたことならある。


確か、ヨリジェ北部の山奥に暮らす民族の名前だよな」


「正解。母さんはそこで産まれた人なの。


この『無色の瞳』は『彩霞ノ民』だけが持つ特殊なものでね。


今みんな体験したから分かると思うけど、これを見た生き物に無差別に恐怖を感じさせるの。


大型の獣だって、うまくいったら一睨みで気絶させられるみたい。


この瞳があったから、危険な山奥でも暮らせたんだと思う」



つい思い出そうとして、セドナは慌てて蓋をした。


けれどもそう考えてすんなり実行できるはずもなく、眼裏に過って身震いしてしまう。


彼以外の何人かも、同様に顔を青くしていた。


思い出してはいけないと考えれば考えるほど、記憶を再生してしまうのが人間の悲しい性である。


ギベオンは袖で冷や汗を拭き、ニコとレムリアンに不満をこめた視線を送った。



(なるほどな、だからゴーレムコンビは平気な顔をしているわけか……理由がはっきりしても、なんだか腹立つ!)



気分を紛らすように空咳を繰り返し、ラリマーが質問した。



「お前の親父さんは、『彩霞ノ民』じゃないのか?」


「父さんは産まれも育ちもルースなの。


瞳の色は瑠璃色、普通の人だよ」