両手で顔を隠し泣きじゃくるティファニーが、セドナの網膜に焼きついている。
きっとあの布団の中で泣いているんだ。
ここで棒立ちしている場合ではない。
分かっているのに、身体が自分のものでないかのように動かなかった。
見えない糸に縛られ、足を床に縫い付けられているかのようだ。
(また、見てるだけなのかよ……)
セドナは唇を噛みしめる。
舌先に鉄の金臭い味が広がり、それである程度透明な呪縛から抜けられた。
一歩、ティファニーの方へ踏み出す。
「ティファニー、どうし……」
「寄らないで」
問いかけは、静かだが激しい拒絶に撥ね飛ばされてしまった。
さらに隅へと逃げるように動いた布団の山に、セドナはその場でたたらを踏む。
すると彼の後ろからニコが進み出、大股でティファニーに近づいた。
主人の命令を2度も立て続けに破る彼は初めてだ。
ニコの足音に布団がますます縮こまり、自分の身を守ろうと動く。
「誰なの、こっちに来ないで」
ティファニーの声は氷のような怒気を孕んでいた。
ここまで冷たい彼女は知らなかったのだろう、セドナたちはギクリとする。


