「お待ちください。
もしも王子に万が一のことがありましたら」
「そんなに心配をするな、僕だって自分の身を守る術なら学んでいる。
とにかく先に行っててくれ、農村には時間通りに向かうから」
「し、しかし……」
「うん?君、僕の武術の腕を疑っているのかい?」
優しく微笑まれたのに、衛兵はぞくりと寒気が走るのを感じた。
背中をきれいに真っ直ぐ伸ばす。
「とっ、とんでもございません、そのように失礼なこと!」
「それなら、何も問題はないね」
「お、王子!」
戸惑う衛兵をそのままにし、セイクリッドは足早に通りを下った。
立ち止まることはせず、あっという間に声が届かないところまで歩く。
残された衛兵はどうしたものかとおろおろしたが、もちろんセイクリッドの知るところではなかった。
途中で裏路地に入り、人気のないところを目指して進む。
やがて誰も来ないような奥まった場所まで来ると、壁に手をついて息を吐き出した。
また汗の浮かんだ顔を空いた手で押さえる。
乱れた呼吸を整えながら壁に寄りかかり、自分の瞳と同色の天を仰ぐ。


