ケセラは荷車を追いかけてきた父親に謝り、ギベオンについて行く。
ようやく鈍痛から解放されたラリマーも走りかけて、ポケットからノートを取り出した。
一枚ちぎりとり、それをさらに二つに分け、それぞれに鉛筆を滑らせる。
細く折りたたんでから、指笛を二回吹き鳴らした。
1つ目は低く平らな、2つ目は低いところから高いところへ上がる調子だった。
しばらくしてラリマーの肩に、栗毛のピウと赤毛のピウが現れる。
「ヒスイ、エピドー、頼んだぜ。
匂いは覚えているよな?」
「チチッ」
「チュー」
ヒスイとエピドーはそれぞれ返事をし、小さな足を動かしてあっという間に路地へ、人影の中に消える。
「ねえ、君……」
見送ったラリマーは自分にかけられた声に振り向いた。
いくらか心を持ち直したセイクリッドだった。
「え、王子サマ、男のオレに何の用?」
敬語でないうえにぞんざいな口調。
しかも、かなり失礼な揶揄まで含んである。
セイクリッドに駆け寄った衛兵が憤るのは当然だ。
「貴様、誰に向かってそのような……」
咎めようとした衛兵を片手で制し、セイクリッドはラリマーの緑色の双眸を覗きこむ。
「君も彼女、ティファニーの友達なんだよね?」
「まあそうだけど」


