「お願い、みんな見ないで。
私を見ちゃだめ、絶対に……お願いだから……。
そうしないと、私、もう……」
消えてしまいたい。
この場からなくなってしまいたい。
ティファニーの表出されない悲痛な願望が、『必要』の針から伝わってくる。
ずっと同じ言葉を繰り返しているのは、それを口にできないからなのか。
呼吸も激しくなりつつあり、呂律も回らなくなってきて何を言っているのか分からない。
このままなだめ続けても収まるどころかひどくなる一方だ。
ニコは目を閉じて束の間考えた。
それから、諦めたような調子で言った。
「ティファニー、すみません」
反応を待たず、ニコはティファニーの首筋に手刀を落とした。
短いうめき声を発した彼女の身体は、力を失ってニコに倒れかかる。
まるで糸が切れた操り人形だ。
セイクリッドもセドナも、ラリマーたちもぎょっとする。
どうにかセドナは口を動かすことができた。
「お、おいニコ、お前何を……!?」
「こういう場合は気を失わせた方が落ち着かせやすいんです。
旅の途中で会った医師に教えてもらいました」
「だからってそんな無茶なこと……。
ティファニー、過呼吸にはなってなかったか?」
「それは大丈夫です、その手前でしたので」
(オレ、こいつ怖いわ……)
ラリマーがこっそり顔を渋くする。
そう思ったのはこの場に居合わせた誰もがであった。


