極彩色のクオーレ






セドナの文句をきれいに無視してギベオンは手帳に何かを書きこむ。


ベンチの背もたれに腹部を引っかけ、セドナはギベオンに飛びかかった。


首に腕を絡め、もう一方の手で髪をくしゃくしゃにしてやる。



「同意書もなくて何が実験だ!


謝罪の一つぐらいしろ!」


「いててて、そんなに怒らなくていいだろ?


少しすればもとの状態に戻るんだからさ」



ギベオンが身をよじり、肘でセドナの胸部を押して逃れようとする。


そうはさせまいと、セドナはさらに腕をきつく締めた。



「お前のやることは度が過ぎてんだよ。


こんなもん、街中に仕掛けたらパニックどこじゃなくなる。


下手したら裁判沙汰だぞ」


「大丈夫、これは獣の撃退用に開発中だからね、人には使わないよ」


「……ちょっと待て、実験台の俺は獣と同レベルか!?」


「あれ、違ったの?」



減らない口である。


セドナは殴ってやろうと拳を構えた。



直後、通行人たちの騒がしい声に気づいた。


枝分かれする前の道の、かなり先の方から聞こえてくる。


甲高い叫び声や野太い悲鳴まで。



「なんだ?」



ギベオンを放してやり、セドナは他の人と同じようにそちらへ向いた。


激しく回っているらしい轍の音が、地響きのようになってこちらに近づいてくる。