「だ、大丈夫だよ、そんなに丁寧にしてくれなくても。
それで、今日のご用件は何かしら?」
「……怒って、いない?」
「え?」
先程までとは売ってかわってしょんぼりした声色に、思わずティファニーは耳を疑った。
しかし、それは聞き間違いではない。
セイクリッドは少し落ち込んだ表情で、ティファニーの様子を怖々伺っていたのだ。
王子の思わぬ行動と態度に、空気と化している衛兵は驚いてばかりいた。
「怒っているって、どうして?」
「それは……昨日、ぼくが君に失礼なことを言ってしまったから。
セドナ、だっけ?
彼に指摘されて気付けたよ、ぼくは君に対してかなり自分勝手だった」
「自分勝手だなんて、そんな…」
「いや、君の気持ちについてとか、ぼくの気持ちについてとか、はなすべきじゃなかったんだ。
本当に申し訳ない」
「きっ、気にしていないから。
もう頭を下げないで」
また腰を折る音が微かに聞こえてきたので、ティファニーは慌てた。
慌てすぎてクッキーの缶を落としそうになって、また慌てる。
悪いことをされたと感じていないのに謝られるのは、大きさの合わない服を着せられているようでどうにも慣れない。


