どんなパーティーだったかはおぼろげなのに、誰とどのような言葉を交わしたのかもよく覚えていない。
なのに、その老婆との話だけはくっきりと思い出せる。
それだけ、まだそのとき乏しかった心に響いたということだろうか。
「ぼくが今まで生きてきた道、か……」
閉じた眼裏に、瞬く光のように過去が映る。
見えるのはまだシャロアに出会う前、暗い心だけを持っていた頃のものばかり。
振り返ると、いつもこの光景が真っ先に思い浮かぶ。
どれほど時が経過しても、犯した罪は、その事実は覆らない。
たとえ、それが自分の意思ではないことであっても。
(……?)
妙な気配を感じたニコは身体を起こしてソファから離れた。
カーテンを開き、ガラスに顔をくっつけるようにして庭を睨む。
すっかりセイクリッドの話になっていたラリマーが、それに気づいて尋ねた。
「ニコ、どうした?」
「今、視線を感じたような気がしましたので。
ですが、庭には何もいません。
森の闇へ逃げた獣か、あるいはぼくの気のせいなのか」
「ゴーレムに"気のせい"なんてあんの?」
「さあ」
正直ではあるが素っ気ない調子で答え、再びニコは外に注意を向ける。
やはり、そこにあるのは闇と月の光と、それによって浮かび出る木々のシルエットだけだ。
揺らめく枝葉の音が、ガラス越しにかすかに聞こえてきた。


