苛立ちの原因は、まだ他にもある。
実はティファニーだ。
セイクリッドにお付き合いを、最後には結婚まで迫られたとき、すぐに断ろうとしていなかったのだ。
しどろもどろになりながら、言い訳同然の言葉を並べていただけだった。
『嫌だ』とさえも、口にしてくれなかった。
それが、セドナの胸中で一二を争うほどもやもやさせる種であった。
それをティファニーに言えるはずもない。
「セドナ?」
長い沈黙だったのだろう、ティファニーが手を少しだけ強めに握り返す。
セドナは間延びした声をあげ、頬を掻いて視線を泳がせた。
さて、どうやって切り抜けようか。
「……もしかして、私のせいだったの?」
沈黙の意味を悪いものだと取ってしまったティファニーがしょんぼりする。
セドナは慌てた。
泣かれてしまったらどうすればいいか分からない。
「いやっ!そうじゃねえよ!?
ただ……ちょっと、面白くないなと思っただけでさ」
「面白くない?」
ティファニーがセドナの言葉を繰り返す。
三叉路に差し掛かり、セドナは明るくて人がそこまでいない道を選んだ。
長い間履き続けたせいで傷が目立つ爪先に視線を落とす。


