二人の側を、雄馬が引く荷車が通る。
追い越されるとき、馭者が帽子を頭から軽く離して彼らに向かって会釈した。
車の小窓から、まだあどけなさがたっぷりとある少女が手を振ってくれる。
それだけで、道を譲って良かったという気持ちになれた。
セドナも微笑んで振り返してあげる。
車輪の音が遠ざかったところで、ティファニーがセドナを見上げた。
「どうして?」
「へ?」
「さっきの話の続きだよ。
どうして、ムスッとしながらあんなに早歩きしていたの?」
セドナは返答に窮した。
あのようになったきっかけはもちろん、セイクリッドの言動である。
優しい口調でティファニーをその気にさせようとしていたのが腹立たしかった。
自分より口達者な点も気に食わない。
それと共に体格や人望の厚さ、人柄の良さや聡明さなど、セドナが持ち合わせていないものがどんどん気になってしまい、さらに嫌になった。
ここまでくると、ただの見苦しいひがみだ。
なにより、一瞬だけでも並んでいたセイクリッドとティファニーを、『お似合い』だと感じてしまった自分が一番許せない。
自分自身の『負け』を認めているようなものだった。


