ここからでは距離があり、行き交う人たちと重なってよく見えないが、楽しげに話しているのであろうということだけは何となく分かる。
すれ違う人たちのほとんどが振り返り、驚いた様子で彼らを、特にティファニーを見ているようだった。
ニコは2人の少し後ろからついて歩いているので、そこまで注目されてはいないらしい。
「なんだアレ!
セイクリッドの奴、いつの間にティファニーをナンパしやがった!
どう見てもデートじゃねえか、クロアに殺されるぞ」
「落ち着け、あとクロアはそんなことしねえよ。
一夫多妻が普通だと思っている奴が恋人だってこと、分かってて付き合ってるんだろうから」
ラリマーが最大限に押さえた声で叫んだ。
その脛に、静かにしろという意味をこめてタンザが肘鉄砲を食らわす。
脳天まで駆け上がった痛みに耐えるラリマーを見ることなく、タンザは続けた。
「それに、多分あれはデートじゃねえだろ。
セイクリッドがデート目的ならニコを連れて歩かないはずだし。
衛兵がいないのは……気を遣わせないためか?」
「どっちにしろ、セイクリッドはティファニーを誘いにわざわざ家まで行ったってことだろ?
ティファニーがあいつを誘うなんてあり得ねえし。
絶対に下心がなきゃやんねえよ、なあ、セドナ」


