傍を通ったウェイトレスの人形に冷たいおしぼりをもらい、セドナに渡してやる。
セドナはそれで、汗をかいた顔を拭いた。
少年はテーブルに頬杖をつく。
「別に恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか」
「うるせえな、恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ!
お前だって、こういう話題になったら赤くもなるし、騒ぎたくもなるだろうが」
「いえ」
きっぱり言われて、セドナの手からおしぼりが落ちた。
あんぐりと口を開けている。
少年は自分の胸に手を当てた。
「誰かを好きになる。
これって、本当に素敵な感情ですよ。
今まで会ってきた人達もそうだった。
どうして恥ずかしがったり、隠そうとしたりするんでしょう。
素敵な心だからもっと堂々とすればいいのに」
少年はお茶を一口飲み、やや醒めた目つきのまま言った。
「ちゃんと表に出さないと、相手には何も伝わりませんよ」


