「あれ、違いましたか?
てっきりそうなのかと思いまして……」
「ちがっ!!……わねえけど」
声を小さくし、倒れた椅子を元に戻してセドナは腰掛けた。
扇のようにした手で顔を仰ぐ。
「その、お前って……鈍いくせにストレートっていうか……もっと遠まわしに言えよ。
恥ずかしくなる」
少年は動きを止めた。
セドナが大声を上げるまでの話を思い出す。
「今の会話で恥ずかしがる必要、ありました?」
「大ありだ、バカ!
平然と言えるかよ、こんなこと!!」
周囲からの視線が散じる。
中にはにやけている客もいた。
二人のやりとりから、内容を察したのだろう。
「若いっていいわね」という声が聞こえた。
のだが。
(この類の話になると、セドナはすぐこうなりますね……)
当の少年はまったくピンと来ていなかった。
良く分からないと首を逆にひねる。
彼の脳内は「?」で埋め尽くされていた。


