「へ?」
セドナの動きがピタリと止まる。
銀のパーツはブローチの形を崩して、テーブルの中央に寄っていた。
少年はセドナにコップを返す。
「真っ先に渡したいと思う人がいる。
頑張って作ってあげたいと思える存在がある。
当たり前のようで、実はなかなかないことではありませんか?
ぼくが見てきた職人の多くは、食べていくためにとか、依頼されたからとか、消極的な意識を持っていました。
いい技術を持っているだけ、なんだか勿体なく感じましたね」
少年は腰に視線を落とした。
陽の光を受けて、ポーチの隙間から覗く工具の先端が煌めいていた。
「それに、君の言う歪さに関しても、何も文句言わなかったんでしょう?」
「……何で分かるんだよ」
「修理屋の勘ってやつですかね」
(発想力はなくても勘は働くのかよ……)
何だか面白くない気分になって、セドナはぼそりと悪態をつく。
少年には、微かに聞こえたようだ。
「なにか言いましたか?」
「言ってねえよ。それで?
文句言わなかったから、どうなんだ?」


