早朝の森、白い靄がふわりと木間を覆う時間帯。


薄暗く目を凝らさなければ周りの様子が見えないそこに、大型獣独特の低いうめき声が鳴る。


罠の網にかかり、さらに数本の矢が突き刺さっていた。


痛みのせいでぐったりしていた獣だったが、近づいてくる気配に目をぎょろりと動かす。


それはランプを持ち、武器や縄を手にした猟師たちだった。



「ガァアアアッ!!」



橙の光に照らし出され、彼らの臭いをかぎとった瞬間、牙を剥いて暴れ出す。


衰弱していたとは思えない強さだ。


近づこうとしていた数人の猟師が驚く。



「うおっ、びっくりした」


「まだ生きていたのかよ……」


「こ、こいつ、よく見たらキマイレナじゃねえか!


なんでエンハンスにいるんだよ!?」


「俺が知るか!」


「キマイレナって、確か凍星(こおりぼし)の中旬にシオードで仕留めたやつがいたんじゃないのか?


まだ他にもいたのかよ」



猟師たちが口々に思ったことを出す。


その間もキマイレナは暴れ続け、やがて罠の金具が一つ外れた。





*凍星……2月のこと。