ロアが完全に、視界にセドナとタンザを捉えた。
けれども、その場から動こうとしない。
じっとこちらに顔を向け、様子を窺うだけだ。
タンザが顎を引く。
「……なんでだ?
セドナがこんなに攻撃しているのに、どうして襲ってこないんだ?」
「俺たちを敵だと認識しているんだ」
「敵?捕食対象じゃなくて?」
「ロアは近くに餌があるときは、視界に入る動物はすべて敵だと思うんだよ。
多分、あいつの中ではハックを餌と考えているな。
その敵がいなくなるまで、ロアは餌の傍から離れることはしない。
たとえ離れても、近づくものに気づいたら、速攻でそいつにおそいかかる」
セドナの説明通り、ロアが動く気配は微塵も起こらなかった。
そうしている間にも、ハックの右足は自身の血でどんどん赤く染まっていく。
うめき声は時折聞こえるので、まだ生きているようだ。
けれど、安心している場合ではない。
「くそっ!せめて、ロアを強く反応させられる物があれば……」


