極彩色のクオーレ






「危ない!」



駆け出していたハックが、動けないままのタンザを思い切り突き飛ばした。


不意を突かれたタンザは岩肌を転がる。


慌てて近づこうとしていたセドナが、どうにか支えて止まった。



「うわああああっ!」




ケガの確認をする間もなく、ハックの悲鳴が響いた。


ハックはうつぶせに倒れこんでいたが、その姿勢がおかしい。


岩についているのは胸部までと左足のつま先だけで、腹から先は不自然に浮かんでいるのだ。


そのすぐ隣には、こちらに白い背中を向けるロアがいる。


見えなくても分かる。


ロアが、あの人間に似た歯をハックの右ふくらはぎに突き立てているのだ。



「ハック!」


「い、痛え……離せ、ちくしょう……」



ハックが言うが、その声はひどく弱弱しい。


激痛に襲われているのだろう、涙が伝っていた。


ロアがゆっくりと顔をあげ、ハックが短い悲鳴をあげる。



(ロアが上を向いた……喰いちぎる気だ!)



いつか読んだ文献に記されてあったロアの捕食について思い出したセドナは、背中と長いフサフサの尾にピンを投げた。


それらはすべて、ロアの背中と尾の付け根に刺さる。


ロアの首の動きが止まり、また口を大きく開けた。


拘束が解かれたハックの脚は、重力に従ってどさりと落ちる。