緩やかな風が斜め上から、彼らの元を吹き抜ける。
その風に、ふもとで嗅いだ臭いが混ざっていることにセドナは気づいた。
マスク代わりに鼻と口を手で覆い、セドナは風上の方を睨む。
(またこの臭い……なんだこれ、腐臭じゃねえよな)
「おわあっ!」
タンザが悲鳴とも奇声ともつかない声をあげた。
バランスを崩したのだろう、尻餅をつき、青ざめた様子でいる。
手を止めてハックが大笑いした。
「ぎゃはははは!おいタンザ、もしかして転がり落ちそうになったのか?
情けねえの、ちびってませんかー?」
「るせえ!てめえが転がり落ちて死ね!
そうすりゃこの世の中、少しはすっきりする」
「こっちの科白だ、バーカ」
そこで言い争いは終わり、2人は作業に戻る。
やれやれとため息をついたセドナは、風上に不穏な気配を感じた。
思わずピンを数本、いつでも投擲できるように握りしめそちらを睨む。
するとそこには、全身を白い長い体毛で覆われた獣がいた。


