だから、「危ないことはダメ」と、念を押すように何度も言ったのだ。
いや、今日に限ったことではない。
これまで生活の端々でティファニーが口にした言葉には、どれほどの意味がこめられていたのだろうか。
そしてそれらは、きちんと相手に伝わっていたのだろうか。
少なくとも、ニコには深いところまで伝わらなかった。
ただ言いつけを守るよう注意する程度だった。
(……夕食のとき、冗談のつもりで、勝負の内容を危険だと勝手に判断していた。
それで思い出してしまったんですね)
ニコはまだ力のこもるティファニーの右手に手を重ねた。
そっと握り、彼女の顔を覗きこむ。
「ティファニー」
頬に触れると、ティファニーはそちらへ顔を動かした。
ニコはリボンに隠された彼女の双眸のあたりを見つめる。
「心配しないでください。
ぼくは絶対、ティファニーの前から突然消えはしません。
この先なにがあっても、君の隣にいますから」
「……ありがと、ニコ」
ティファニーは口元に笑みをのせると、ゆっくり立ち上がった。
パチン、と両頬を叩く。
「そんな心配、する必要なかったわね。
あはっ、こんな遅くまでうじうじしちゃってた。
……寝るには惜しい夜空だけど、寝不足で昼間動けないのはもっと嫌だわ。
ニコも部屋に戻ろ。勝負の手伝いなら、それに備えてしっかり休まないと」
「はい」
椅子をもとに直して、2人はそれぞれの部屋に向かった。
戻ってから、ニコは何かに引っかかり、ベッドの中で首を傾げた。
だが、それが何なのかは分からず、動力を蓄えるためにニコは再び瞼を閉じた。


