声をかけようとして、ニコは足元にあったゴミ箱を蹴ってしまった。
静寂が支配していた空間が、その音に呆気なく破られる。
「だ、誰?」
弾かれたように立ち上がり、両手で目を覆ってティファニーが振り向いた。
寝間着姿である。
肩に引っかけていただけのカーディガンが、目隠しと共に彼女の足元に着地した。
手すりがなかったら、絶対に庭に落ちている。
「ニコです。驚かしてすみません。
物音が聞こえたもので……」
「に、ニコ?なんだぁ、びっくりした」
転がったゴミ箱を戻して、ニコは主人に近寄る。
途中で引き返し、椅子を一脚持った。
その間にティファニーは手早く目隠しをした。
「こんな時間にどうしたんですか?」
「なかなか眠れなくてね。
ちょっと夜風に当たりたいなーと思って起きたの。
ごめんね、起こしちゃって」
「気にしないでください」
隣に椅子を置き、ニコはそこに座った。
ティファニーも腰を下ろす。
暗い森に切り取られた闇色の空には、いくつもの星が瞬いていた。
まるで小さな宝石を散りばめたベルベットのようだ。


