レムリアンは手を離し、自分の膝へ戻した。
なぜだかそうしなければならない気がしたのだ。
「……君は、君ニ”心”をもらったワタシにも、難しい人ダ。
いつも自分ノ感情とは反対のコトを言っテいた。
ワタシにハ、それが分からナイ。
ワタシを追い出シタあの日から、君ハ感情とハ反対のこトを、嘘に似たことヲ口にすルヨうになってイタ。
……『完璧』デはないワタシには分かラナい。
どうして君ガそうナッテしまったノカも、君が抱いている感情モ」
追い出される前日、家を訪れた男を思い出す。
きれいな服を纏った、上品そうな客だった。
その日は珍しく、リビアはレムリアンを部屋に近づけさせなかった。
いつも傍らにいたレムリアンは不思議に思いながらもそれに従う。
男は長い時間家にいて、陽が沈みかけるころに出て行った。
リビアの声が聞こえなかったので、レムリアンは様子を見に彼女のいる部屋に向かった。
細く開いたドアの隙間。
そこから覗いた、俯く主の姿。
顔はよく見えなかったけれど、ひどく悲しげで、怒りを抱えているようにも感じた。
レムリアンは声をかけることができず、その場からそっと離れた。
そうして翌日、リビアに捨てられた。
その言動の意味が、ようやく理解できた。


