「すっげえ……まるで繭だな」
その上に伸びる枝に座っていたセドナは、真下の異様な光景に口元をゆがめた。
ギベオンが斜め前の茂みを指差す。
「ニコ、あとは任せた!」
「はいはい」
そこに隠れていたニコは網の前に出て、右足の砲を構えた。
キマイレナの頭部と思われる箇所に砲口を向ける。
くぐもった、もうほとんど抵抗の意識のない唸り声が発せられた。
「この方法だけはとりたくありませんでしたが……ケセラの臭いをいつまでも追いかけられては困りますからね。
すみません。せめて痛くないよう、一瞬で済ませます」
脳裏に映像がちらつく。
雪になる手前、冷たい雨が降りそそぐ戦場での一幕。
『覚える』ようになってから初めて砲を使った戦争の記憶だ。
羅針盤に痛みを感じる。
(――向ける相手が、人ではなくて本当に良かった)
束の間祈るように瞼をおろしてから、ニコは手板を操作した。
カチ、と足首に点火音が走り、鉄球が放たれる。
ドシュッ!
「ゴオオオオォォォォォ……」
キマイレナの痛々しい悲鳴が小さくなっていき、ふつりと途切れる。
止まりかけていた振動がまた多く強くなり、流れる青緑の血が何回も行き来する線を描いた。


