ケセラは落ちないように岩の瘤にしがみつきながら、下の太い道をのぞきこむ。
薄暗くてはっきりは見えないが、視覚を失ったキマイレナは動けない様子である。
立ち上がろうとし、足をもつれさせて転ぶのを繰り返していた。
苦手としつつもケセラが原案を出し、ニコが『改造』した、作戦通りとなった。
(よ、よし……)
袖で慌てて涙を拭き、ケセラは対岸に身を潜める刺繍屋に叫んだ。
「ティファニー、お願い!」
「分かったわ!」
ティファニーも負けないくらいの大声で返し、鞘を抜きはらう。
柄を両手で握りしめ、ニコに教えられた縄を切った。
ピンと張りつめていた縄が一瞬で緩む。
ニコがつくった天井の滑車が軽い音を立てて回り、その先につないであった大岩が重力に従い落下する。
それは真っ直ぐ、キマイレナの後ろに着地した。
「わ、わあっ!」
先程と同じ重い音がして、ケセラが思わず首をひっこめ、コルルが警戒しながら後ろに下がる。
ティファニーも両手で耳を覆い、尻餅をついた。


