「今、この中でそれができるのはケセラだけです。
君の原案をぼくが利用し、それで作戦を立てたら、ギベオンたちに伝えに行きます。
きっと、彼らの協力も不可欠になってくると思いますから」
「え……でもっ……」
ケセラは自分のつま先に目を落とした。
何か案を『考える』、新しいことを『生み出す』、彼が苦手とすることだった。
誰かに言われたことに従うことはできても、自分から出すことができない。
それは何通りもの細工を考え出さなければならない鍵職人として、致命的な欠点であった。
(ど、どうしよう……僕には、できないよ)
「みゅー」
「みゅう、みゅう」
途方に暮れた表情のケセラの足元に、デシンをはじめ数匹のコルルが集まってきた。
ケセラの足にすり寄ったり、彼の服の裾を甘噛みしたり、じゃれついてくる。
「デシン、みんな……」
(そうだ……ここには、僕より小さいコルルがたくさんいるんだ。
キマイレナがここに来たら、獲物を僕じゃなくてコルルに変えちゃう。
デシンも、他の子も……みんな食べられちゃう)
瞼を閉じた眼裏に、キマイレナの姿が過ぎる。
秘密基地に乗りこみ、鼻をひくつかせ、コルルたちを追いつめている。
逃げ場を失ったコルルたちを捕まえ、牙を突き立てる。
真っ赤な血が、キマイレナの口から迸り、辺りを同じ色に染める。
悪い想像だった。
(……そんなの、絶対に嫌だ)
ケセラは小さな拳に力をこめた。
「……ニコさん」
「はい?」


