「えっ、な、何?」
「みゅー」
とび出てきたのは、茶色の毛をもつ小さな獣だった。
細長い耳は先端が黒く、薄緑の尾はまるで高貴な女性が纏う領巾(ひれ)のよう。
澄んだ水底と同じ青色の瞳が、3人を静かに見つめている。
「あ、もしかして」
「デシン!」
ニコを押しのけ、ケセラは友達に駆け寄り抱きしめた。
大粒の涙がこぼれる。
「こんなところにいたんだね!
心配したんだよ、怪我とかしていない?」
「みゅうー」
デシンもケセラの頬にすり寄った。
堅くなっていたケセラの表情がやわらぐ。
「デシン見つかったの?良かった」
「うん。ありがとう、ティファニー、ニコさん」
傍らにしゃがみ、ティファニーはそろそろと手を伸ばす。
デシンは一瞬牙を剥きかけたが、臭いをかぐと、その指先を舐めた。
「すごい、デシンが噛み付かない……」
「え?」
「コルルは初めて会う人にはよく噛みついたり、毛を逆立てたりするんだ。
でも、デシンは平気みたい。
ティファニーが優しい人だって、分かってるのかな?」
「そう……かしら」
その刹那、ティファニーの口元が暗くなる。
だがデシンを見つめているケセラは気づかなかった。
ニコもケセラに近づき、彼の肩を叩く。


