「この先に、けっこう広くて深い洞窟があるから、そこへ逃げろ!」
森の奥、という意味に気づき、ずっと黙っていたケセラが口を開いた。
「ええっ、で、でも、逃げるなら街の方が……」
「キマイレナは一度嗅いだ獲物の臭いは、獲物がものすごく遠くまで逃げるか、食っちまう限りどこまでも追いかける。
このまま街へ行ってみろ、被害がでかくなるだけなんだぞ!
そんなことも知らないでキマイレナの相手してたのかよ、バカケセラ」
「バカはてめえだ、こんな時まで悪態つくんじゃねえ!」
ギベオンの脳天にげんこつを落とし、セドナはニコの胸を叩いた。
ニコが唇を尖らせる。
「多分、臭いを覚えられたのはケセラの方だ」
「え!?ど、どうし……」
「あ、それはですね」
「説明は後にしろ、ニコ。お前の足なら洞窟まであっという間だろ。
ティファニーとケセラを連れて逃げろ!」
「ここはボクとセドナに任せてくれよ。役に立つかどうかは別として」
もう一発生意気な仕掛け職人を殴り、セドナは修理屋を見上げた。
「頼んだぞ」
「……分かりました」


