むくっと、転がった獣が起き上がった。
首を左右に振り、口に挟まっていた木を食いちぎる。
大人二人でどうにか抱えられるほど太い木が、あっけなく三つに分けられる。
その異様な光景にケセラは言葉を失い、ティファニーは派手な音に驚く。
「ガルルル……」
獣がゆっくりと身体の向きを変える。
堅い尾が当たり、そこにあった木を簡単になぎ倒した。
ケセラは思わずティファニーにしがみつく。
ティファニーもケセラを抱きしめ、音が鳴る方に注意する。
「ケセラ、もしかして、あそこに獣がいるの?」
「う……うん」
ケセラは何とか返事をするが、それが精一杯だった。
あの獣の名前は知っているけれど、恐怖が勝って答えられない。
両足もこの場に縛り付けられているようで一歩も動けない。
「グルルルル……ガウガウッ!!」
再び獣がこちらに走り出したのを、ティファニーは聴覚で悟った。
地を踏み鳴らす音を身体で感じながら、泣き出しそうなケセラを支える。
彼の限界はとっくに超えているだろう。
(このままじゃ……)
姿の見えない獣が迫ってくるのが分かる。
タイミングよく逃げるか、相手の気を何かでそらさなければ、今度こそ餌食となってしまう。
(父さん、母さん、ごめんなさい。
でも、この子を守るためにはこうするしか………!)
迷っている場合ではない。
意を決し、ティファニーは頭の後ろに片手を回した。


