「ティファニー、あのね」
「シッ。しゃべるのちょっと待って」
立てた人差し指を唇に当て、ティファニーはケセラを黙らせる。
そのまま顎を引き、耳をすませた。
ケセラも息をひそめ、同じようにする。
ズシン……ズシン……
確かに鼓膜に届く、謎の音。
「なに、この音……。何かの足音かしら」
「わ、分からない……」
重い音は次第にティファニーたちに近づき、枝に触れたり折ったりする音も聞こえてくる。
やがて木々の狭間から、その全貌が明らかになった。
それはケセラが、最も怖い外見をしていると思う大型の獣だった。
頭は牛のそれを模していて、胴は猿、獅子のような手足は6本あり、鱗をもつ3本の尾はまるで蛇である。
頭部と尾以外は、黒い毛でびっしりと覆われていた。
本でしか見たことのない異様な獣に、ケセラの身体は恐怖に引きつる。
「き……キマ、キマ……」
「ケセラ……何か、そこにいるの?」
獣が黒い鼻をひくつかせ始めた。
匂いに気づいたのだろう、2人に顔を向ける。
ギョロリと飛び出ている大きな青い目に見つめられ、ケセラは寒気をおぼえた。


