女将がまた笑ったとき、足元で「ニャー」という鳴き声と機械音が聞こえる。
そこには小さな荷車を引く猫の人形があった。
「おや、お帰り、ジル。配達ご苦労さま」
「女将さんの猫ですか」
「そうなの、人形だけど。前まで飼っていた猫が死んじゃってね。
そのことを話したら、リビアが造ってくれたのよ」
「リビア?」
「街はずれの家に住む人形職人だよ。
……あ、そうだ。ジル、ティファニーちゃんの家まで荷物を届けてあげて」
「え?だ、大丈夫ですよ。
このくらいの荷物、持って帰れます」
「そーんな遠慮しなくていいわよ、たまには楽して帰んなさい、ね?」
女将の勢いに負け、ティファニーは荷物をジルの荷台に預けた。
毎度ー、という女将の声を受けてティファニーは青果屋をあとにする。
ジルに少々申し訳ないが、おかげで重い荷物を持たずに帰れる。
ニコはクォンタムの重機の修理に行っているので、今日は傍にいなかった。
「あ、クッキーのいい匂い……そうだ、お菓子の材料も買っていこう」
菓子売りの間を通って思いつき、ティファニーはいつもとは違う通りに入る。
そのとき、軽い足音とともに震える声が聞こえた。


