「な、なあ、引き返した方がよくないか?
この先、ガイヤの密集区じゃなくなるぞ……」
背高の職人が周囲にランプの光を向ける。
確かに、彼らの立っているところは同じ木が生えているが、あと数歩進めば、そこからは種類が異なる木ばかりだ。
ガイヤの木は見当たらない。
「少しぐらい進んでも大丈夫だろ、そこまで離れてなければ獣は寄ってこない」
「そうそう、獣よけのガイヤの樹液、何のために持ってんだよ」
背高の職人は、首から吊るしてある小瓶を振ってみせた。
自分の胸元をさぐって、小柄な職人はちゃんとあることを確認する。
でも、行くのはやはり怖い。
「まあ、ムリに来なくてもいいぞ。
お前だけ先に工房へ帰ってな」
「え?」
「来たかったらついてこいよー」
戸惑う小柄な職人をよそに、長髪の職人はどんどん先へと歩いていく。
背高の職人も、平然とそれに続いた。
ランプの柄を握りしめて小柄な職人は振り返る。
そこに横たわる広い闇。
あの中を進んできたはずなのに、足元から恐怖がのぼってくる。


