「ファイアの職人は加工職人しかいねえんだ。
取り扱っている店は村に一軒ずつしかないし、陶器となると高いし、在庫の問題もあってな。
飯屋以外は木の皿や椀を使っているんだよ」
最後のテーブルを戻して、青年は窓の外に向いた。
街灯や家から漏れ出る光が、夜の黒色にぼんやりと色を添えている。
「狩りも楽しいけど、色んな技術や材料を見るのも捨て難いな。
ちょっとでいいから、みんなより長くルースにいたいよ」
「お兄さん、職人を目指してるんですか」
「いんや、そうじゃない。
俺たちが狩った獣が、どんなふうに使われていくのかに興味があるだけさ。
狩人なら、そこらへんも知っておくべきだと思ってね」
こつん。
腰の辺りに小さな衝撃が走った。
少年が見下ろしてみると、そこにはパクがいた。
テーブルと椅子を戻したことで間隔が狭くなり、彼女の進路をふさいでしまっていたのだ。
「ああ、ごめん」
よけたところで、少年は何か硬くて軽い物を蹴とばした。
それは涼やかな音をたてて、部屋の隅まで滑る。
「なんだ?」


