「僕、北のシオードの森に動物を飼っていたの……
デシンっていう友達。僕、仲良くしてくれる人いないから」
「デシンが、その友達の名前なの?」
「うん」
『ペット』ではなく『友達』とケセラは言った。
その動物が彼にとってどれほど大切な存在なのかが分かる。
「シオードの入り口に住んでいて、いつも会いに行っていたんだ。
だけど、デシン、どっか行っちゃったの……」
「いなくなったってことですか?」
ニコのストレートな言い方に、ケセラが言葉を詰まらせる。
セドナが彼の脇腹を肘で小突いた。
ティファニーがニコの言葉を気にならなくさせるためにさらに優しく問う。
「デシンって、なんの動物なの?」
「雄のコルルだよ」
「こるる?」
首をかしげるニコに、セドナがため息をついて説明した。
コルルとは、細長い耳と絹のように薄い尾が特徴の小動物である。
体液が空気に触れると光るので、発光材の原料として利用される。
腹部には水晶体があり、深く息を吸いこめば吸いこむほど、その部分を中心に身体が強く光るのだ。
警戒心が強く凶暴なため、飼育は難しい。
ケセラが飼っていたというデシンのように人間に馴れるコルルもいるようだが。


