ギベオンに言われて少年がうつむく。
ポタ、とレンガに滴が垂れた。
「うわっ、もう泣いてる!
ケセラは泣き虫だなー、そんなんじゃ鍵職人なんてつとまらないぞ」
懐から何かを取り出して、ギベオンはケセラと呼んだ少年に投げつける。
不気味に赤色でペイントされた人形の首だった。
反射的に受け止めて、ケセラは声にならない悲鳴をあげて、それを投げ捨てた。
助けを求めるようにティファニーの服にしがみつく。
「ちょっとあなた。ギベオン、だっけ?
意地悪するのはよくないわよ」
ティファニーが厳しい声音で言うと、ギベオンはそれがどうしたというように口を尖らせた。
「なーんでこんな泣き虫を庇うんだ?
コイツがいじめられるのは、臆病で意気地なしで、すぐ泣くせいだよ」
「くおらぁ、ギベオン!」
すると今度は怒声。
ギベオンとは反対側の路地から、セドナが走ってきた。
怒りをあらわにしていて、顔をあげたケセラがあわてて視線をそらす。


