女将が何かを思いついた。
セドナの方へずいと身を乗り出す。
「セドナ。あんたこの間、工具が壊れたって言ってたじゃないか。
ええと、なんだったかねえ……」
「半田鏝(はんだごて)のこと?」
「そうそう、まだ直ってないのかい?」
「うん、壊れたっつっても、まだ使えるからさ。
あれ以外に使いやすいの売ってねえし、そもそも金もねえし……」
セドナがしょんぼりとうなだれる。
どうやら、彼の暮らしはあまり余裕がないようだ。
「なら、直してもらったらどうだい?
凄腕の修理屋さんがいるんだよ」
「へ?どこに」
「ここにさ」
女将はちらりと少年に視線を投げた。
目が合うと、いたずらっぽくウインクする。
突然話を振られた少年は、パンを頬張ったまま静止した。
こちらを見るセドナと向き合う。
「……お前、そんなすげえ修理屋なのか?」
「すげえってもんじゃないよ。
首がもげちまったパクを、あっという間に直してくれたんだ。
ねえ、修理屋さん?」
答えられないので、少年はとりあえず首肯する。
セドナは数回まばたきをして、何か少年に言おうと口を動かしかけた。


