少年はパチパチ瞬きした。
すると先を行っていたセドナが立ち止まり、彼を振り返った。
臙脂の光が届かず、表情はよく分からない。
「お前、今日はティファニーと1日いたんだろ?
あいつとどんな話したんだ?」
「え?」
いきなり尋ねられ、少年は記憶を巡らす。
ティファニーが気分がいいと鼻歌を歌うこと、サフィラや主婦たちと仲がいいこと。
意地悪なことをされても街すべての人を嫌ってはいないこと、ティファニーの家族のこと。
改めて思い返してみると、たった1日過ごしただけなのに、彼女の内面に触れられたような気がする。
セドナに話すと、彼はしばらく黙した。
それから眉根を下げ、力なく笑う。
「お前にはかなわねえや」
「え?」
セドナはくるりと背を向け、両腕を後ろに組んで歩き出した。
後方に回ったランプが揺れ、それに合わせてセドナの影も踊る。
「あー、なんか悔しいな」
「だから、何がです?」
「お前、ティファニーが街でいじめられてたとこ、助けてくれたんだろ?」
「ああ、はい」
「その時にあいつがお前に話したこととか、さっきの家族の話とか。
お前はすんなり話してもらえてたよな。
あいつ、俺にはお前ほどしゃべってくれなかったよ。
あ、言ってはくれたけど、初めて会ってからだいぶ時間が経ってからだったし、かなり遠回しな言い方でさ。
それを何度か繰り返して、ようやくあいつの話を理解できたんだ。
いくら仲良くなっても、さっきみたいにストレートに教えてはくれなかった」


