極彩色のクオーレ






もぬけの殻になったベッド。


なくなったマスターの荷物や衣類。


床に転がった鈍色の懐中時計――



あの朝のことは少年の電脳回路に、羅針盤に、深く深く刻み込まれていた。


盤に制御されてはいたが、大きな負の感情に襲われた。


暴走する手前まで『悲しみ』と『怒り』の感情が身の内でうねった。


きっと、壊れるまで忘れられない。



「それで、お前は旅に出たのか」


「ええ、そのまま森に留まっていても仕方ありませんでしたしね。


せっかく複数の”心”を記憶できるように造り替えてもらいましたから、覚えられるだけ覚えたいと思いました。


それに……」



少年は左胸の辺りをなでた。


合成樹脂膜や胸骨の働きをする部品の下で、羅針盤が動いている。



「ゴーレムは造り出される理由は、造り出した人間の役に立つため。


だから、自分をこの世に生み出してくれた造主と居ることを生物の本能のように望むんです。


人と共に動くのが、ゴーレムの存在理由です。


ぼくも、叶うならばもう一度、マスターのゴーレムとして動きたいです。


こうして”心”を覚え人間に近づきながら、マスターの情報を求め、それを頼りに彼を探しています」


「……そっか。


じゃあ、早くマスターさんを見つけないとだね」



妙に明るい声を出してティファニーが言った。


けれども、少年は首を振る。



「そうしたいのは山々ですが、まずは人間に近づくために”心”を集めなければなりません。


マスターがぼくを捨てた理由が『未完成』なら、少しでも完成に近づかないと、また捨てられてしまいますからね」



ティファニーが曖昧に頷く。


そのテーブルの下では、何かに耐えるかのようにスカートの裾をかたく握りしめていた。


少年には気づかれなかったが、セドナはそれを見逃さなかった。