少年は腰のポーチから一本の工具を取り出した。
手入れをされてあるが、それでも落としきれなかった錆がところどころに付いている。
「これはマスターが使っていた工具です。
半年前、『修理屋の弟子卒業だ』と言って、彼がずっと持ち歩いていたもののうちの一本をぼくにくれました。
その翌日、マスターはぼくの前から姿を消しました。
ぼくを連れて行ってはくれなかった、つまり捨てられたんですよ」
造主に置き去りにされる。
何も役目を与えられないまま、姿を消される。
それは造主がゴーレムに『要らない』と暗に示す行動であった。
「……どうして、そのマスターさんは修理屋くんを置いて行ったの?」
「さあ、理由はぼくにも分かりません。
書き置きも何も残さないで、あの人は行ってしまいましたから。
よほど言いたくなかったのか、言う価値もなかったのか。
自分の内面を見せているようで、肝心なところには蓋をして、他人には絶対に打ち明けない性格でもありましたね」


