気に入っている客人なのか、女将の声が心なしか弾む。
「こんばんはー」
まだ幼さを残す声が、男たちの騒音にやや消えそうになりながらも届いた。
訪れた客はやかましい狩猟組をもの珍しそうに見つつ、二人のいるカウンターに寄ってきた。
「こんばんは、セドナ。毎晩ご苦労さまね」
女将が紙袋を差し出す。
マグカップを傾けながら、少年はセドナと呼ばれた客を見た。
歳は少年よりも若干幼いくらい、14、5程だろうか。
襟足くらいまで伸びた鳶色の髪を、無造作にうなじで一つにまとめている。
猫を連想させるパッチリとした双眸に、やや小柄のひょろりとした体格。
微かにする研磨材の匂いから、職人だと推測できる。
作業のしやすそうな服も、首から下げているゴーグルも、所々が薄汚れていた。
「今日は誰が来てんの?」
「ファイア村の狩人さんたちだよ。
はい、これはおまけね」
違う色の紙袋を渡されて、セドナの瞳がくるんと動いた。
「え、いいのおばさん!?」
「ああ、いいさ。
どうせまた、ヒーラーのお使いだろう?
たまには自分で買いに来させなよ。
あのろくでなし、見習いをこき使うとは、何様のつもりなんだか。
……あ、そうだ」


