極彩色のクオーレ






ヨリジェはリシャーナの隣国であり、この大陸では最も大きい。


リシャーナが『技師の宝庫』ならば、ヨリジェは『武力の宝庫』。


大陸全土の終戦条約が結ばれるまでにここまで領土を広げられたのも、武力の礎が他国より強固であったからだ。


ちなみにリシャーナは国として成り立ったころから中立の立場を貫いていたので、戦火に巻き込まれることはなかった。



「記憶があるのは雨が降る戦場の帰り道で、水溜まりに映る自分の姿を初めて知り、周りの雑兵兵士で同じ型がいないことに気付いた頃からです。


ぼくを改造する際に調べたマスターの見解ですが、おそらく敵兵の特徴を記憶する部品と回路に何らかのアクシデントが生じて、見たものも記憶できるようになったのでしょう。


これまでエネルギーを抜かれ、再び補給されて動くときにはすっかりなくなっていた戦争の記憶が、徐々に残り始めたのもこのあたりです。


命懸けでぼくを壊そうとしてきた者の顔やその末路がいつしか忘れられなくなり、そこからぼくに『恐怖』の感情が芽生えました」


「羅針盤を持っていないのにか?」



セドナが首をかしげる。


羅針盤?とさらにティファニーが首をかしげたので、セドナが簡単に説明をしてあげた。


少年の羅針盤を見せてしまえば手っ取り早いのだが、あいにくティファニーには見えないのである。



「マスターがいうには、ぼくの兵器の中核に使用されていた素材が、羅針盤の軸に使われる素材と同じなんだそうです。


長い時間をかけてあらゆる人間から同じ感情をぶつけられてきたから覚えたのでは、というのがマスターの考えですね。


正しいかどうかは分かりませんが」