「だからあの放浪人間の話はやめろって。
せっかくの飯がまずくなっちまうぞ、早く食べよう」
苛立たしく手を振ってティファニーを遮り、セドナはパンにかじりつく。
ティファニーが小さく笑って紅茶を飲んだので、少年も食事を始めた。
「どうかな?」
しばらくの沈黙を挟み、ティファニーがおずおず少年に尋ねる。
味について問われていることに気づき、口の中のものを流し込んで答えた。
「おいしいですよ。
前の街で泊まった宿屋の料理より、ずっとおいしいです」
「本当に?嬉しい、作った甲斐があるわ」
「うまいぞ」
競うようにセドナも褒め、無言で少年を睨んだ。
なぜ敵視されているか分からず、少年は首をかしげる。
ティファニーは素直に喜んだ。
「セドナもありがとう。
やっぱり、『おいしい』って言ってもらえるのっていいわね。
次も頑張って作ろうって思える」
「なあ、修理屋。その前に泊まったっていう宿屋、そんなにまずかったのか?」
「うーん、決してまずくはありませんでしたが……」
その会話から、少年のこれまでの旅路について、二人はあれこれ尋ねた。
どこの国を見たのか、人々は、国の雰囲気は、暮らしはどうであったか、印象に強く残っていることはあるか。


