「杖、持たなくて平気なんですか?」
戻ってきたティファニーに少年は質問する。
「うん。家の中はどこに何があるのか、もう覚えちゃっているから。
杖は外を歩くときに使うの。
こんな風に、何も持たなくて歩けるのは家だけだよ」
平気だというアピールか、ティファニーがくるりと回転する。
しかし、立てかけてあった棍棒に躓き、壁に額を打ってうずくまった。
どうやら、普段ないものの場所までは把握できないらしい。
「……移動、させておきます?」
「そうして……。一番奥の部屋、使っていいから」
しゃがみこんだまま、ティファニーが奥へと続くドアを指差す。
少年はそれに従い、荷物を持って廊下に出た。
客室にしているのだろう、きれいに整えられたベッドが用意されている部屋だった。
棍棒の点検を済ませて戻ると、立ち直ったティファニーが夕食の支度をしていた。
彼女の動作には戸惑いや迷いが一切なく、目隠しに気づかなければ目に不自由ない人と大差ない。
感覚を叩き込んだとティファニーは言ったが、並大抵のことではなさそうだった。


