「女将さん、怒らないんですか?」
「なににだい?」
「あの人たち。さっきから暴れ方がすごいですよ。
酒をラッパ飲みしているし、皿は割れているし……」
女将は人形から皿を受け取りながら、カラカラ笑った。
流し台に置き、カウンターに頬杖をついて狩猟組を見つめる。
「いいんだよ、いつものバカ騒ぎだからねえ。
ここで好きなだけ飲んで食って騒いで、それが明日の仕事の活力になるなら、アタシは大歓迎だよ。
ま、あの程度の騒ぎ、ランプ職人の親父連中に比べたら、かわいいもんさ」
すると、顔を赤くした小柄の青年が、おぼつかない足取りでこちらにやってきた。
彼もしっかり飲んでいるようだ。
倒れこむ勢いで、少年に絡みつく。
「よう、坊主ぅ、おまえもあっちで飲まねえか?」
「コラ!成人手前ならともかく、まだまだ年のある子供に勧めるんじゃないよ!!」
「ヒイイッ!すっ、すんません!!」
青年は肩を縮こまらせて、テーブルに退散した。
フォークを咥えたまま見送って、少年は女将に軽く頭を下げた。


