ティファニーがぱちんと両頬を打った。
「あー、だめだめ、暗い顔したら。
幸せが逃げちゃう」
それがきっかけで、彼女の雰囲気が明るく変化した。
気持ちを切り替えたのだろう。
うじうじするのが嫌いな性格なのかもしれない。
「そうですね。大分遅くなりましたが、お昼にしましょう」
「うん」
ティファニーをベンチで待たせ、少年は荷物と杖を拾う。
踏み潰してしまったリンゴのことを謝り、他につぶれてしまった青果がないか確認した。
「どこで食べますか」
「あのね、この先においしいサンド屋さんが……」
バキッ
「わっ!」
軽い音が鳴って、ティファニーの身体がかくんと揺れた。
少年はとっさに支え、転がった杖を見る。
中ほどあたりから、杖が真っ二つに折れてしまった。
男子が投げてぶつかったときに、ひびか亀裂が入ったのだろう。
「大丈夫ですか?」
「うん、ありがとう……え、何が起こったの?」
「杖が折れました」
「えっ!どうしよう。
もうお昼代くらいしかないのに、折れた杖なんて使いにくいのに……」
「使ったことあるんですか」
「階段から落ちた時に折れちゃってね」
杖を持っての歩行なのに、この危なっかしさ。
(よく生きて来れましたね)
言いかけた言葉を飲み込んで、少年は折れた杖を手にした。


