ざわ、と胸の奥が揺らぐ。
黒々とした感情が、左胸から沸き立つ。
この『心』は覚えている、どうやって芽生えたのかは分からないけれど、マスターに出会う前は際限なく抱いていたことは覚えている。
少年は男子たちの方へ歩いた。
途中で踏みつけたリンゴがぐしゃりとつぶれる。
それを無視して進む。
男子たちは遊ぶのに夢中だからか、接近している少年にまったく気づいていない。
「うすのろオンナ、悔しかったらここまでおーいで」
杖を投げた男子が、ティファニーの背中に回って舌を出した。
少年はその肩を捕まえ、力をこめる。
「いってえっ、離せよ」
男子は身をよじったが、少年の腕は外れない。
他の男子も黙って少年を見上げた。
流れる空気が変わったのに気づいてか、ティファニーの動きが止まった。
「刺繍屋に、なにかご用ですか」
無表情な少年の声に、肩を掴まれた男子の表情がこわばった。
頬を赤くして、乱暴に答える。
「な、なんだよ、おまえ!
別にコイツに何してたって、おまえには関係ないだろ?
ヒーロー気取りかよ、だっせえの」
「君たちの方が、よっぽどかっこ悪いと思いますが」


